お知らせ

2019.07.19

ニュース

AI俳句協会設立のお知らせ-データ共有プラットフォームとしてのAI俳句協会ウェブサイトの開設-

概要

2019年7月にAIが俳句を作る「AI俳句」の普及を目指してAI俳句協会を設立いたしました。また、AIが生成した俳句を人が評価して、その評価結果を蓄積・共有するプラットフォームとして、AI俳句協会ウェブサイト(https://aihaiku.org)を開設いたしました。本稿では、AI俳句協会の設立の経緯や開設したウェブサイトの概要をご紹介いたします。

AI俳句協会設立の挨拶

AI俳句協会 会長 松原 仁(はこだて未来)
俳句とAIについて考える場としてAI俳句協会を設立して、初代の会長を務めることになりました。よろしくお願いいたします。AIの参入によってこれまで人間だけのものであった俳句の世界が広がって新たな地平が切り開かれることを期待しています。ぜひ多くの方々がAI俳句に関わっていただけますようお願い申し上げます。

背景

俳句は日本で生まれた世界一短い定型句であり、江戸時代から現代までたくさんの作品が作られています。その楽しみは、単に作品をつくるだけではなく、集まって互いに作品を批評しあい、学び合いながら成長していくことにあります。見たこと、感じたことを創意工夫して短い言葉で表現し、人に伝えることにその醍醐味があります。
そのためにAI俳句協会は最新の人工知能技術を用いて俳句を生成し、俳句を評価する研究に取り組んでいます[2]。AI研究の観点からは、AIに人と同じような俳句を作ることが目的ではなく、「人とAIが調和して発展する動的システム」を実現するためにAIが本当の知能の獲得することを目指しています。

経緯

AI俳句の研究は、Sapporo AI Lab [1]が推進する人工知能による俳句の自動生成に関する実証実験である「AI一茶くん」プロジェクトとして、2017年9月に北海道大学の研究チームが中心となって始められました。人間が俳句を詠む際の、俳句を「生成する」、「評価する」、「批評する」といったプロセスを人工知能により実現することを目標として、研究を進めてまいりました[2]。

研究を開始した際、人が俳句に対してどのような評価をするのか、どのような景色(写真画像)に対してどのような俳句が景色を的確に描写していると評価されるのかといったデータを収集するため、2017年10月に札幌で開催されたNo Mapsで市民ボランティアに協力を呼びかけました。その活動がNHKの目に止まり、2018年2月26日放送のNHK総合「超絶凄ワザ!」にて、AI 一茶くんチームと俳句の専門家による人類チームとの対戦が実現されました。残念ながら研究を開始して半年程度での対戦ということもあり、AI 一茶くんチームの惨敗に終わりました。

しかし、この対戦に対する俳句の専門家からの反響は大きく、その後も2018年7月に愛媛県松山市の俳人集団とのしりとり対局の開催や、2019年2月に北海道文学館の特別展へのインタラクティブな俳句生成器のデモ出展を通じて、多くの方々から評価を受けて研究を進めてまいりました。その結果、AI俳句の生成機能に関しては、人の詠んだ俳句に迫る質の俳句の生成が可能であることが分かってきました。一方で、AI俳句の選句機能に関しては、生成した俳句群から人が良いと思う句を選び出すことはできず、「選句」するための俳句の評価が課題となっていました[3]。

古くから人工知能研究の対象となっていた囲碁や将棋などのゲームにおいては、人とは無関係に盤面の良し悪しを評価することが可能です。それに対して、俳句は人が評価すべきものであり、「人がその俳句をどう思うか」という人の存在を前提として評価する必要があります。また、俳句は良いものを作るだけでは完結しません。俳人が集まって開催する句会では、それぞれが作った俳句について良し悪しを批評し合うことも大事な活動です。そのため、AI俳句に対して俳句を嗜む方々が評価をする “人とAIの句会“に位置付けられる場が求められていました。

内容

このような背景を踏まえて、この度、技術と芸術が互いに刺激しあう“人とAIの句会”となるAI俳句協会を設立いたしました。AI俳句協会ウェブサイトは、AIが生成した俳句を人が評価して、その評価結果を蓄積・共有するプラットフォームとなることを目的として構築されています。AI俳句協会のウェブサイトは、俳句を自動生成するAI俳句の開発者とAI俳句を採点する評価者に向けて、以下の機能を提供いたします。

AI俳句開発者向け機能

・イベント毎の兼題の提示(※兼題を用いずに詠んだAI俳句を投稿することも可能)
・AIが生成した俳句のアップロード用APIの提供
・アップロードされた俳句の公開
・AI俳句の評価結果を集約して、開発者向けにダウンロード可能な形式で提供

人工知能に人と同じように俳句を評価させるためには、人が俳句を評価した結果が大量に必要とされます。さらに、人工知能が生成した俳句を人が評価して、その結果を開発者にフィードバックする仕組みが必要です。しかし、これまでのAI俳句の研究では、各研究者が個別に研究を進めることが多く、学習データとなる俳句データや人がAI俳句を評価した結果等のデータが共有されておらず、共通のデータで俳句を生成・評価を行ったり、新たにAI俳句の研究を始めることが困難でした。AI俳句協会のウェブサイトを通じて蓄積されたデータを公開・共有することで、AI俳句の研究を促進することを目指します。

AI俳句評価者向け機能

・公開された俳句を4段階で評価
・評価結果をTwitter やFacebook への埋め込み可能な形式で提供
・全評価者の評価結果を集約したAI俳句ランキング(月間・週間)の集計

人もAI俳句の評価プロセスを楽しめるようにサイトを構築しました。AI俳句協会のウェブサイトでは、人によるAI俳句の評価を個人ごとに蓄積して、TwitterやFacebookへの埋め込み可能な形式で提供することでコンテンツ化することを可能としました。このような仕組みを提供することで、俳句に興味を持つより多くの方々にAI俳句の評価に参加していただくことを期待しております。

本件問い合わせ先

AI俳句協会 事務局
北海道大学大学院情報科学研究院 情報理工学部門
複合情報工学分野 調和系工学研究室
川村秀憲 教授、山下倫央 准教授、横山想一郎 助教
TEL: 011-706-6495  FAX: 011-706-7834
E-mail: harmo-contact@complex.ist.hokudai.ac.jp
HP: http://harmo-lab.jp/

参考資料

[1] SAPPORO AI LAB:人工知能による俳句の自動生成に関する実証実験「AI一茶くん」プロジェクト, https://www.s-ail.org/works/aihaiku/
[2] 松原仁,川村秀憲:人工知能による文学創作,電子情報通信学会誌,Vol.102, No.3, pp.240-246(2019)
[3] 横山想一郎,山下倫央,川村秀憲:深層学習を用いた俳句の生成と選句,人工知能,Vol.34, No. 4,pp. 460-466(2019)

 

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